Claude マニュアル

プロンプトの基本原則

「Claude に頼んでみたけど、思ったような回答が返ってこない」「毎回違う品質の答えが来て、安定しない」——そんな経験はありませんか?

その原因の多くは、Claude の能力ではなく 指示の書き方(プロンプト) にあります。同じ Claude でも、指示の仕方次第で回答の質は大きく変わります。このページでは、あらゆる Claude 製品で使える「よい指示の書き方」の基本原則を学びます。

テンプレートを暗記する必要はありません。3つの原則を理解すれば、自分のあらゆるタスクに応用できるようになります。


なぜ「指示の書き方」が重要なのか

同じ質問でも、聞き方によって返ってくる答えはまったく違います。

次の2つの指示を比べてみてください。

指示A(曖昧な例):

メールを書いて

指示B(明確な例):

以下の状況に合わせた取引先への依頼メールを書いてください。

状況: 来週の打ち合わせ日程を変更したい
相手: 3年間取引のあるメーカーの営業担当者
変更理由: 社内で急な会議が入った
希望の新日程: 翌週の月曜日か火曜日午後
トーン: 丁寧かつ簡潔に。謝罪の言葉も一言添えてください

指示Aに対して Claude は「どのメールか」「誰宛か」「何の目的か」がわからないため、汎用的で使えないメールを書くか、逆質問してきます。指示Bなら、すぐに使える質の高いメールが返ってきます。

つまづきポイント: 「Claude は賢いんだから、細かく言わなくてもわかるはず」と思いがちですが、Claude は あなたの頭の中にある文脈を知りません。人間の同僚に仕事を頼むときと同じように、「背景」「ゴール」「条件」を丁寧に伝えることが大切です。

この差を生み出すのが、これから説明する3つの基本原則です。


原則1: 明確に伝える

最初の原則は「曖昧さをなくすこと」です。

Claude は指示に書かれていないことは推測で補います。その推測があなたの意図と一致しているとは限りません。指示が曖昧なほど、Claude の解釈とあなたの期待がズレる可能性が高くなります。

曖昧な言葉に気をつける

「いい感じに」「適切に」「わかりやすく」といった表現は、人によって解釈が違います。何をもって「いい感じ」なのかを具体的に言い換えましょう。

ビフォーアフター 1: 文章の修正依頼

❌ これをいい感じに直して

[長い文章]
✅ この文章を以下の基準でリライトしてください:
- 文を短くする(1文は60文字以内)
- 受動態を能動態に変える
- 結論を最初の段落に持ってくる

[長い文章]

ビフォーアフター 2: 資料の要約依頼

❌ このPDFを要約して

[PDFの内容]
✅ この資料の要約を作成してください。
要件:
- 300文字以内
- 箇条書き形式(3〜5点)
- 経営層への報告に使うので専門用語は避ける
- 最重要の数字(売上、コスト等)は必ず含める

[PDFの内容]

ビフォーアフター 3: アイデア出し依頼

❌ 新商品のアイデアを考えて
✅ 以下の条件で新商品のアイデアを10個出してください。

前提:
- 対象: 40〜60代のオフィスワーカー
- 価格帯: 3,000〜8,000円(ギフトに最適な価格)
- カテゴリ: 文具・デスク用品
- 競合との差別化: エコ素材を使った日本製であること

「何をしてほしいか」をはっきり書く

動詞を明確にするだけで、回答の質が上がります。

曖昧な指示明確な指示
「この文章どう?」「この文章の論理的な矛盾点を指摘してください」
「競合について教えて」「A社・B社・C社の料金プランを比較表にしてください」
「このメール見て」「このメールの返信文を3パターン書いてください(丁寧・簡潔・強調版)」

つまづきポイント: 「明確に書かなければいけない」と意識しすぎると、プロンプトが長くなりすぎることがあります。最初は箇条書きで「やってほしいこと」「やってほしくないこと」「出力形式」の3点だけ書く習慣から始めましょう。


原則2: 具体的に伝える

「明確さ」と似ていますが、「具体性」は 数値・形式・基準を使って細部を指定すること です。「何を・どのように・どの程度」を指定するほど、期待に近い出力が得られます。

「何を」——出力の内容を指定する

何を含めてほしいか、何を含めなくていいかを書きます。

ビフォーアフター 4: 企画書の作成

❌ 新サービスの企画書を作って
✅ 以下の構成で新サービスの企画書の本文を作成してください。

必ず含めるもの:
- サービスの概要(100文字以内)
- ターゲットユーザーの定義
- 競合との差別化3点
- 初年度の収益見通し(数字のプレースホルダーでOK)

含めなくていいもの:
- 詳細な技術仕様
- 財務諸表

サービス情報: [サービスの情報をここに書く]

「どのように」——出力の形式を指定する

文章か箇条書きか、表か段落か。形式を指定すると、そのまま使えるアウトプットが返ってきます。

✅ 会議の議事録を以下のフォーマットで作成してください:

## [日付] [会議名]
**参加者**:
**決定事項**: (箇条書き)
**課題・検討事項**: (箇条書き)
**次回アクション**: (担当者・期限付き箇条書き)

以下の会議メモを整理してください:
[会議メモをここに貼る]

「どの程度」——量・深さを指定する

文字数、項目数、詳細度を指定すると、過不足のない回答が返ってきます。

ビフォーアフター 5: 説明の依頼

❌ AIについて教えて
✅ AIについて、以下の条件で説明してください:
- 対象: IT知識のない経営者(50代)
- 文字数: 500文字程度
- 専門用語は使わず、身近なたとえを使う
- 「自社のビジネスにどう使えるか」という視点を入れる

ビフォーアフター 6: タスク分解の依頼

❌ このプロジェクトの計画を立てて
✅ 以下のプロジェクトを週次タスクに分解してください。

プロジェクト: 社内ナレッジベースの構築
期間: 3ヶ月
担当: 私1人(兼務。1日2時間程度)
ゴール: 部署の業務マニュアルをすべてデジタル化してWikiに格納する

出力形式:
- 第1ヶ月・第2ヶ月・第3ヶ月に分けて
- 各週に2〜3個のタスク
- 各タスクの目安時間(時間数)も記載

つまづきポイント: 具体的に書こうとするあまり、「完璧なプロンプト」を作ることに時間をかけすぎる人がいます。まず大まかに依頼して、返ってきた回答を見て「もっとこうしてほしい」と続きのメッセージで調整するほうが、多くの場合は効率的です。


原則3: 文脈を提供する

3つ目の原則は「背景・目的・制約を伝えること」です。

Claude は指示を文字どおりに実行しようとします。しかし、同じ作業でも「誰のために・何の目的で・どんな制約のもとで」によって、最適なアウトプットは変わります。この情報(文脈)を提供することで、Claude はあなたの状況に合った回答をしてくれます。

「なぜ」を伝える——目的を共有する

目的を伝えると、Claude が「本当に役立つこと」を判断できます。

ビフォーアフター 7: 文章チェックの依頼

❌ この提案書の文章をチェックして

[提案書]
✅ この提案書の文章をチェックしてください。

目的: 来週の経営会議で、予算300万円の承認を得るために使います。
読者: 技術に詳しくない50代の役員3名
重点的にチェックしてほしいこと:
- 投資対効果が明確に伝わるか
- 反論されそうな点を先回りして答えているか
- 全体の論旨に矛盾がないか

[提案書]

「誰が」を伝える——立場・役割を共有する

あなたが誰で、どんな立場から依頼しているかを伝えると、回答が状況に合ったものになります。

✅ 私は中小企業(従業員30名)の経理担当者です。
経理ソフトの乗り換えを検討していますが、
現在の弊社の規模・業務量に合ったソフトウェアの選び方を
教えてください(クラウド型のみ、月額予算は3万円以内)。

Role / Task / Format のフレームワーク

文脈を整理するためのシンプルなフレームワークとして、Role(役割)/ Task(タスク)/ Format(形式) があります。

要素内容
RoleClaude に演じてほしい役割「あなたはベテランの人事担当者です」
Taskやってほしいこと「以下の求人票を添削してください」
Format出力の形式「修正点を箇条書きで、各点に理由もつけて」

この3要素を意識するだけで、プロンプトの構造が自然と整います。

実際の例(求人票の改善依頼):

あなたは採用広報の専門家で、求人票のライティングに10年以上の経験があります。
(Role)

以下の求人票を添削してください。
(Task)

以下の観点で評価してください:
1. 応募者にとって魅力的に見えるか
2. 会社の文化・価値観が伝わるか
3. 求める人物像が具体的か
修正案は元の文章の横に【修正後】として示してください。
(Format)

[求人票をここに貼る]

ビフォーアフター 8: レポート作成の依頼

❌ 市場調査のレポートを書いて
✅ あなたはマーケティングコンサルタントです。

私は国内向けのオーガニック食品ブランドを立ち上げようとしています。
以下の調査結果をもとに、投資家向けの市場調査レポートを作成してください。

調査データ:
- 国内オーガニック食品市場規模: 2023年 約2,300億円
- 年間成長率: 約7%
- 主要購買層: 30〜50代の女性(特に子育て世代)

レポートの要件:
- A4・2ページ相当(約1,200文字)
- 「市場機会」「競合状況」「参入戦略」の3章構成
- 投資家向けなので数字とリスクを明確に記載

[追加の調査データがあればここに貼る]

つまづきポイント: 「文脈を伝える」のが大事と言われても、どこまで書けばいいか迷いますよね。目安は「初めてこの仕事を頼む外部のフリーランサーに送る依頼メール」のイメージです。読んだ人が「何を・なぜ・どのくらいの品質で」やればいいかがわかるレベルを目指しましょう。


3原則をまとめて使う

3つの原則は、それぞれ独立して使えますが、組み合わせると最大の効果を発揮します。

次の例は、日常的なビジネスタスク(週次報告書の作成)に3原則をすべて適用したものです。

改善前(原則なし):

週次報告書を書いて

改善後(3原則を適用):

以下の情報をもとに、今週の週次報告書を作成してください。

【目的と読者(文脈)】
- 読者: 直属の上長(部門長)
- 目的: 業務の進捗確認と、来週の方針決定のための情報共有
- 私の役職: 営業部 係長

【今週の主な活動(情報)】
- 月曜: A社への提案書を完成、メールで送付
- 火曜〜水曜: B社との商談(3回)。先方の予算感が判明
- 木曜: 新規リードへのフォローアップコール 8件
- 金曜: 月次の売上集計作業

【報告書の要件(明確・具体的)】
- 形式: 「今週の実績」「来週の予定」「相談事項」の3セクション
- 分量: 各セクション200文字以内
- 数字は具体的に(訪問件数、商談件数など)
- 読みやすいよう箇条書きを使う

このように3原則を意識するだけで、そのまま使える週次報告書が返ってきます。


実践ワークショップ

読んだだけでは身につきません。実際に手を動かして、自分のプロンプトを改善してみましょう。

問題1: 曖昧な指示を明確にする

次の指示を、3原則を使ってより明確に書き直してください。

元の指示:

競合調査してほしい

ヒント:

  • どの競合?(業界・会社名)
  • 何を調べる?(価格?機能?マーケティング?)
  • どんな形式で欲しい?(表?レポート?)
  • 何のために使う?(社内共有?プレゼン?)

改善例:

国内のクラウド型経費精算ソフトの競合調査をしてください。

調査対象: 楽楽精算・マネーフォワード経費・freee経費 の3社
調査項目:
- 月額料金(ユーザー数30名の場合)
- 主な機能の有無(スマホ申請・承認フロー・会計ソフト連携)
- 対象規模(中小企業向け/大企業向け)

出力形式: 比較表(行=製品名、列=調査項目)
用途: 来月の社内会議で導入製品を決定するための資料

問題2: 文脈を追加する

次の指示に「文脈」を追加して、より的確な回答が得られるように改善してください。

元の指示:

英語でメールを書いて

ヒント:

  • 誰に宛てたメール?(取引先?社内の海外拠点?)
  • 何の目的で?(依頼?報告?謝罪?)
  • どのくらいのフォーマル度?
  • 日本語での下書きはある?

改善例:

以下の日本語の下書きを、英語のビジネスメールに翻訳してください。

相手: アメリカのサプライヤー(長年の取引先)
目的: 来月の発注数量の変更を伝える
トーン: 丁寧かつビジネスライク。過度に堅苦しくない関係
言語: アメリカ英語

日本語下書き:
「来月3月の発注数量について、当初の1,000個から1,200個に変更させてください。
需要予測の上方修正があったためです。ご対応可能かご確認をお願いします。」

問題3: 自分のプロンプトを改善する

あなたが最近 Claude に送ったプロンプト(または普段よく使う指示)を1つ取り上げてください。

以下のチェックリストで見直してみましょう:

チェックリスト:

  • 明確さ: 動詞が具体的か?(「見て」より「チェックして修正案を出して」)
  • 具体性: 文字数・件数・形式を指定しているか?
  • 文脈: 目的・読者・制約を伝えているか?
  • Role: 必要なら Claude に役割を与えているか?
  • Format: 出力形式(箇条書き・表・段落など)を指定しているか?

1つでも「いいえ」と答えた項目があれば、その情報を追加してみてください。多くの場合、回答の質が目に見えて改善します。

ワークショップは読むだけでは効果が半減します。実際に Claude を開いて、改善したプロンプトを送ってみましょう。「前のプロンプトとどう違うか」を比べることで、原則の効果を体感できます。


よくある質問

Q: プロンプトが長くなりすぎて不安です。短くても大丈夫ですか?

A: 短いプロンプトでも大丈夫な場面はたくさんあります。「このメールの要約を3行で」のような単純な依頼には、短い指示で十分です。長くする必要があるのは、「品質の基準が厳しい」「誤解されると困る」「専門的な文脈が必要」な場合です。

Q: 毎回詳しく書くのが面倒です。何かいい方法はありますか?

A: よく使うプロンプトのテンプレートを作っておくと便利です。たとえば「議事録要約テンプレート」を一度作って保存しておけば、次回からは会議メモを貼り付けるだけで使えます。Claude の Projects 機能を使えば、よく使う指示をシステム設定として保存することもできます。

Q: Claude が思った答えを出してくれないとき、どうすればいいですか?

A: 同じ会話のなかで「もっと短く」「もっと具体的な数字を入れて」「この部分だけ書き直して」と続きのメッセージで修正依頼ができます。1回で完璧を目指さず、対話しながら改善していくのが実は一番効率的です。


次のステップ

3つの基本原則を理解したら、次は「特定の状況で繰り返し使えるパターン(型)」を学びましょう。Chain of Thought(段階的思考)、Few-shot(具体例の提示)、XML タグ構造化など、より高度なテクニックを紹介しています。

  • プロンプトパターン集 — Chain of Thought、Few-shot、XML タグなど、7つの再利用可能なパターンを解説しています。本記事の続編です。